「美味しんぼ」の福島の件だが、
風評だ、真実だ、という議論にもなっていない喧噪に、
やがて人格批評に落ち着くという、お決まりのコースをたどったように思う。
広島も長崎も、69年前「風評」にさらされたわけだが、
入市被爆といわれる被害のことを考えると、
首相も風評と言い、断定的な物言いをする学者の言を聞くと、
健康な若者が、放射能障害で亡くなり、年寄りが無事であったりしたことを、
何ととらえればよいのか。
事故当時の枝野の「直ちに健康に影響があるわけではない」という言葉が、
たんにパニックを防ぐだけの言い逃れであったことを思うと、
福島の放射能障害を風評と言うのは、政治的判断であると考えるのがよいと思う。
被爆2世として生まれた私が、健康に不安を感じるとき、
それが原爆のせいであるのかないのか、
断定的にイエスともノートも言えない不安がぬぐい去れない。
広島も長崎も、健康被害は「確率的」に生じたのである。
たまたま「くじに当たった」者を見ぬふりをして、「風評」と断じても、
福島、広島、長崎で生きる者たちに、決定的な安心はもたらさない。
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