日本経済全体として自由化の利益が損失より大きいことは明らかだが、生産者が損することも明らかだ。つまり貿易自由化は生産者から消費者への所得移転だが、これはゼロサムゲームではない。生産者にB-Eに相当する額を所得補償すれば所得分配にも中立になり、経済の効率は上がる。これがWTOの方針であり、民主党の提案した農業戸別補償のもともとの考え方だ(今は単なるバラマキになってしまったが)。
つまり関税を廃止して所得補償に変えれば、農家の所得を同じに保っても消費者は利益を得る。日本は農業に比較優位はないので、農家が他の産業に転換することで生産性も上がる。ところが内閣府も経産省も輸出増だけを考えているので、メリットが見えない。おそらく反対派のいうように、TPPによって輸入増が輸出増を上回るだろう。それは日本にとっていいことなのだ。
池田信夫blog part2
「TPP参加による消費者の利益は生産者の損失より大きい」 (2011年10月29日 13:43)
消費者になるには、消費行動以外に何の資格もスキルも要らない。
それゆえ、現代社会においては、全ての人間が消費者として位置づけられる。
生産者になるには、スキルを初めとした様々な要件が必要である。
とくに農業においては、生産者のスキルのみならず、「土地のスキル」が必要となる。
消費者の利益を生産者の損失に優先させることは、今後長い時期にわたって「土地のスキル」を放棄することになる。
また、「
農家が他の産業に転換することで生産性も上がる」と池田は言うが、それは他の産業に必要なスキルの習得を要請することになる。
人が生きるとはどういうことか。
少ない収益でも、時には損ばかりしていても、生き甲斐を持つことはできる。
損が厭なら転職せよという物言いは、放射能汚染が厭だというのは間違いだという口ぶりと同じだ。
損得でしか人生を語れない時代は終わろうとしているのではないか。
しかしいまだに損得勘定は、私たちの身に染みている。
戦中派が軍隊式を捨てきれないのと同じように。
私たちは私たちが育った(育てられた)語法の中でしか、
物事が考えられず、発言できないのだろうか。
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